イラン産ザクロは実が大きい。日本など、海が近く雨が多い地域では熟れて皮が堅くなる前に果実が成長して実が割れる。イランは乾燥していて土地に水分が非常に少ないため、ザクロの木は生き延びるために地面に深い根を張り、時間をかけて最大限の栄養を吸収する。その結果、皮が薄くて果実は十分に大きくなり、果汁も十分、種も小さく、丸ごと食べることができるイランのザクロができる。

　日本のザクロと違ってイランの人はザクロの種も食べる。日本産のザクロは果汁が少なく種が堅く大きい。ザクロを食べると口が種だらけになって困る。イラン産のザクロは粒（種衣）の果汁が豊富で種が小さく柔らかいから種まで美味しく食べられる。イランの子どもたちはザクロの種を出そうとすると両親からひどく叱られるという。ザクロの種に栄養成分が含まれているからである。

　イランには「ザクロ職人」がいる。自然のザクロから実をとると、１つの木でも日当たりによって品質にばらつきがあり、市場には品定めするザクロ職人がいて、料金を払って頼むと品質の良いザクロを選んでくれる。

　ザクロの可食部100ｇあたりに含まれるビタミンは、五訂日本食品標準成分表（2000年）によると、ビタミンEが0.1mg、B1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、パントテン酸、Cが、それぞれ0.01mg、0.01mg、0.2mg、0.04mg、6μg、0.32mg、10mgである。また無機質は、ナトリウム、カリウム、カルシウムが、それぞれ1mg、250mg、8mg、マグネシウム、リン、鉄が、それぞれ6mg、15mg、0.1mgである。カリウムの量が目立っている。

　ミネラルを含むとともに、クエン酸などの有機酸を持っている。カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にする働きがある。ビタミンや酒石酸、クエン酸などの酸も多く、疲労回復に役立つ。紅い果汁にアントシアニン、タンニンなど、ポリフェノールがたっぷり含まれる。抗酸化作用による生活習慣病の予防に効果が期待できる。

　ザクロは、古くから「女性の果実」と呼ばれ、健康や美容に効果があるとされている。以前、ザクロに女性ホルモンのエストロゲンが含まれ、更年期障害の改善や豊胸作用があるなどという情報が流通してブームになったことがあるが、国民生活センターが検査した結果では含まれていないことがわかった。女性ホルモンと同じ作用があるエストロンは微量ではあるが含まれているというが量は極めて少なく効果は疑問視されている。

　ザクロの乾燥させた樹皮または根皮は、生薬名として「石榴皮」（ザクロヒ）あるいは「石榴根皮」（セキリュウコンピ）といい、条虫（特に有鉤条虫）の駆虫薬として用いられてきた。過去にはイギリスやアメリカ合衆国の薬局方にも収載されていた。日本薬局方には初版より「石榴根皮」として収載され（後にザクロヒ）、第7改正（1961年）まで収載されていた。通常、駆虫には乾燥させた樹皮または根皮 30 - 60g を 300 mL の水に 5 - 6 時間に浸したものあるいは煎じたものを服用するが、多量に服用すると中毒を起こす場合がある。

　ザクロは室温でも、皮を剥かなければかなり日持ちする。密封して冷蔵しておけば２～3ヶ月間は保存できる。ほぐした実も密封して冷凍保存することができる。


露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す　　　　西東三鬼
柘榴揺れゐてさ迷へる国ありき　　　　　飯田龍太

滑舌のよき商人や柘榴割る　　　　　　　富沢壽勇
柘榴の実落ちて沈みぬ宗祇水　　　　　　　　和夫

尾池和夫