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静岡の大地(20)南海トラフの巨大地震の歴史 2023年3月13日


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 富士山からの土石流が富士川などから駿河湾に流れ込んで堆積する。その堆積した土砂は、南海トラフに発生した巨大地震などで、駿河湾から続く南海トラフへ乱泥流となって流れ、九州の日向灘あたりまで流れていくことがある。そのような大規模な現象を起こす巨大地震が、西南日本外帯の沖である、つまり静岡、愛知、三重、和歌山、高知、宮崎の沖にある大きな海底に溝、すなわち南海トラフに沿って起こる。

日本列島周辺のプレート運動

 南海トラフは、フィリピン海プレートが現在西南日本の陸地を端とするユーラシアプレートの下に潜り込んでいる。その潜り込み口で陸のプレートの端を引きずり込んでおり、その境界がときどき外れて陸地の端が跳ね上がる。そのとき巨大地震が発生し、跳ね上がった海底の動きで大津波が発生して陸地の海岸へ押し寄せる。このような現象が100年くらいの間隔で繰り返し起こっているのが西南日本の大地の基本的な動きとなっている。
 南海トラフの巨大地震に関連して陸地側の活断層や活火山も活動する。フィリピン海プレートが陸地の端を引きずり込んでいる時には押された陸地の活断層にストレスが溜まり、活断層がずれやすくなる。一つひとつの活断層は2000年に一度というような間隔で大地震を起こすから、長い間ずれていない活断層に次の大地震が起こることになる。また、活火山では地表から10kmくらいの地下にマグマがたっぷりと溜まっていて、しばらく噴火していない火山が活動することになる。これが西南日本の活動期で、南海トラフの巨大地震の前50年くらいから始まる。巨大地震の後にも10年ほどはその影響が残って活断層や活火山の活動がある。

 前回の西南日本の活動期は、1891年の濃尾地震、1925年の但馬地震、1927年北丹後地震、1930年の北伊豆地震、1943年鳥取地震などがあり、1944年の東南海地震と1946年の南海地震が活動期のピークで、1948年福井地震があって、その後、静穏期となった。その静穏期は1995年兵庫県南部地震前まで続き、その後次の活動期に入って現在に至っている。

 このような西南日本の特性をあらためて認識しておくために、今回は南海トラフの巨大地震の歴史をまとめておきたい。世界的に見ても西南日本には長い歴史が記録されており、その分析が進んでいるために、長期間の質の高い史料が利用できるという場所である。そのことを次の大地震に備えるために活かすことが大切である。

 今までに、史料からわかっている南海トラフの巨大地震の概要を表とグラフに示す。これらの詳しい内容は理科年表の日本の被害地震の表の中に掲載されており、一般に閲覧できるようになっている。そこから抜粋したのが次の表と図である。

南海トラフの巨大地震の概要(理科年表から抜粋)


南海トラフの巨大地震の時系列(尾池和夫による)

 政府の地震調査研究推進本部は、1995年1月17日に発生した阪神?淡路大震災の経験を活かし、地震に関する調査研究の成果を社会に伝え、政府として一元的に推進するために設置された特別の機関である。そこから発表されているさまざまな資料のなかから、南海トラフの巨大地震の特徴を説明した図を次に引用する。

南海トラフの巨大地震の発生状況(地震調査研究推進本部による)

 この図の説明を以下に引用しておく。
「過去に南海トラフで発生した大地震は、その震源域の広がり方に多様性があります。また、南海地域における地震と東海地域における地震が、同時に発生している場合と、若干の時間差(数年以内)をもって発生している場合があります。東海地域の地震でも、御前崎より西側で、断層のすべりが止まった昭和東南海地震(1944年)と、駿河湾の奥まですべりが広がったと考えられている安政東海地震(1854年)では、震源域が異なります。また、宝永地震(1707年)の震源域は、津波堆積物などの調査結果から、昭和南海地震(1946年)や安政南海地震(1854年)の震源域より西に広がっていた可能性が指摘されています。慶長地震(1605年)は揺れが小さいが、大きな津波が記録されている特異な地震であり、明治三陸地震(1896年)のような津波地震であった可能性が高いとされています。また、南海トラフでは、分岐断層が確認されており、過去にはプレート境界だけではなく、分岐断層がすべることによる地震も起きていたと指摘されています。」

 ここまでの理解で、南海トラフには近い将来、必ず巨大地震が起こるということを認識することができるはずである。それならばいつ起こってもいいように備えておこうという心構えに繋がってほしい。

 次に重要なことはこのような南海トラフの巨大地震の前後にどのように西南日本の地震の活動期が起こったかを見ることである。尾池は西南日本の地震活動期を直感的に理解してもらうために、それぞれの活動期の年表を、南海トラフのそれぞれの巨大地震から10年間隔の等間隔目盛りの年表としてまとめた。その表の例を以下に示す。

地震の年表(1605年慶長地震から1707年宝永地震まで。10年間隔で書いた年表)


地震の年表(1707年宝永地震から1854年安政地震まで。10年間隔で書いた年表)


地震の年表(1854年安政地震から1944年昭和の地震まで。10年間隔で書いた年表)


地震の年表(1944、46年の昭和地震から次の巨大地震まで。10年間隔で書いた年表)


 これらの年表からわかることは、西南日本の活断層帯の大きな地震は、過去の活動期には地震が起こっていない活断層に起こるということ、また、それらが連鎖反応しているように次々と近くの活断層帯で起こっている場合が多いということである。例えば濃尾地震、三河地震、福井地震を起こした活断層の並び、但馬地震、北丹後地震、鳥取地震の活断層の並びなどが注目される。

 現在は1995年の兵庫県南部地震からの活動期であるが、その周辺では山崎断層、三峠断層、中央構造線活断層の紀ノ川沿いの部分などが連鎖反応の可能性を持っている。

1995年兵庫県南部地震の活断層帯に起こった余震分布と周辺の活断層帯

 次回は歴史上の南海トラフの巨大地震それぞれについて、史料をもとに少し詳しくまとめておくことにしたい。今後の議論の参考のために必要に応じて参照していただけるようにするつもりである。

尾池和夫



参考URL
下記は、大学外のサイトです。

地震調査研究推進本部「南海トラフで発生する地震」
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kaiko/k_nankai/

公益社団法人日本地震学会「日本付近のおもな被害地震年代表」
https://www.zisin.jp/publications/document05.html

『理科年表』「地学」の目次
https://official.rikanenpyo.jp/medias/UryHX/uploads/files/バックナンバー/目次/2023年/mokuji_chigaku.pdf(PDF)

参考文献
尾池和夫『2038年南海トラフの巨大地震』(マニュアルハウス)
尾池和夫『新版活動期に入った地震列島』(岩波科学ライブラリー)
尾池和夫『日本地震列島』(朝日文庫)

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